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竹細工
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竹細工

強靭でしなやかな特性をもつ竹の性質は、日本人のDNAに刷り込まれているように思える。

たとえば、日本の原風景などでは、麦わら帽子ではなく竹の菅笠をかぶったお百姓さんたちが、水田で苗を植えているものもあれば、竹で編んだかごを背負ったおばあさんを題材としたものもある。農家の庭先で大きなざるになんの実なのかはわからないが、乾燥させている画もある。

現代でも、ししおどし（添水（そうず）ともいう）という風流関係のものもある。これは流水を竹に注ぎ込み、重みで竹が水を吐き出してもとにもどるときに、竹と石がコーンという音をだすものである。この音は周囲の空間の静寂さと寂寥感を際立だせるものであり、不快に感じる日本人はいないのではないか。もし、この音をうるさいと感じる者がいるとすれば、それは静寂さに対して気持ちが落ち着かないのである。

また、手作りの製麺所では麺を乾燥させるために竹のすのこを使ったり、作業場の掃除に竹ぼうきを使ったりもする。

少し高級な蕎麦屋に行けば、ざるそばなどはざるに盛られて出てくる。夏場になれば、風通しと日陰を作るためにすだれを軒先にぶら下げるのが、一般的とまでは言わないが、結構見かける。

極めつけは、流しそうめんである。流れるプールの超ミニチュア版にそうめんを入れて、洗濯機さながらにぐるぐるそうめんをまわすのだが、夏場に田舎へ行くと竹を半分に割り、節目をえぐり取って、それを二段か三段の長さにして、そうめんを流すのである。もちろん、取り損ねたそうめんは大ざるの中に落ちるようになっている。

このように現代にあっても実用に供される竹製品であるが、いまから60年近く前の子供たちにとっては、それこそ身近な遊び道具であった。

ここでは、こういった実用面を離れて、インテリアとしての竹を取り上げてみる。

インテリアとしてみた場合、竹というのはどんな空間においても嫌味がない。部屋に溶け込むとか雰囲気を作るといっただいそれた物ではなく、そこにあるだけで絵になるのである。

たとえば便所に竹の花差しがあったとしよう。そこに一輪の花があっても、誰も変だなあ、とは思わず、自分の生理的欲求を解消することに集中できる。竹の花差しも特別な自己主張はせず、ただ見てくれた人に、自分はここにいるからね、といった程度の存在感しか出さない。

竹細工の魅力をもう一度、再発見して頂きたいと思う。