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寄木細工
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寄木細工

寄木細工は現代の家屋、部屋には合わないと思っていた。床はフローリングで、壁はオシャレな壁紙で覆われ、機能的な家具なども合理的に配置されており、ここには有名どころの画家の風景画などが似合うのではないか、と思っていた。

とんでもない間違いであった。

寄木細工は種々雑多な色合いの木片を組み合わせて、およそ49通りの模様を紡ぎだすものである。
これを壁にかけると、なんということか、部屋の空間を邪魔したり疎外したりすることはなく、また、寄木細工が自己主張をすることもない。試しに取り除いてみると、なんとなく寂しい感じすらした。

この感覚はなんというか、ラーメンとシナチクの関係を思い起こさせた。
ラーメンがくると、「ラーメンがきた」とはいっても「シナチクがきた」とは誰も思わない。ラーメンをすすり、大御所のチャーシューを食らいつつ、ふと箸がシナチクに触ると、「ああ、そういえばお前もいたんだよなあ。別に無視していたわけじゃないんだけどね」などといいつつ、ラーメンと一緒にシナチクを食べるのである。ラーメンののんびりした口当たりとシナチクのちょっとなよっとしたシャキシャキ感が口の中で楽しいハーモニーを奏でるのである。

だから、ラーメンがきたとき、もしシナチクがなければきっと寂しい思いをし、ラーメンの底を箸でひっくり返して探すことだろう。シナチクは決して自己主張をせず、だが、必ず存在しているので、なんというかラーメン屋と客の暗黙の了解の上に成り立つ存在である。

寄木細工もしかり。家主（というのかな）と寄木細工の暗黙の了解の上になりたつ、不思議な存在である。

そして、寄木細工の秀逸な点は、からくり箱にある。あっちをスライドさせ、こっちを引っ張りして、蓋を開けるのである。
この行為は、いまどきの目ん玉をひん剥いて、指よちぎれよ、とばかりにキーボードだかコントローラーをたたくのとは違い、なんか、童心に帰ったようなゆとりを感じる。今風な言い方をすれば、立体的なパズルである。そのからくり箱を机の引き出しにしまっても、違和感なくおさまり、ときどき出してスライドさせながら中身を確認したりするとき、どうしてもニヤニヤしてしまう。

寄木細工とそのからくり箱は、見た目よりも奥が深そうである。