どうせやるなら
十代の終わりごろ、知人に誘われて座禅の会へ参加した。出かけたのは夜の七時か八時頃だったとおもう。
寺だか神社なんだかすでに忘れているが、なんとなく座禅を組むのにふさわしくないような建物だったと記憶している。
行きがけに、ただ座るだけだろう、と思ったが、本当にそれだけだった。
棒だかなんだか知らないが、(本当は警策(きょうさく、けいさく)という)そんなものもなく、
結跏趺坐(けっかふざ。両足の足首を互い違いに左右の太ももにのせる座り方)、
半跏趺坐(はんかふざ。左右どちらかの足首を他方の太ももにのせる座り方)どころか、
自分はあぐらもかけないので、ケツに円形の小さくて分厚い座布団をあてがってもらい、ようやくあぐらをかくことができた。
そればかりか、腰が痛いので背筋が伸びないと訴えると、胸だけ張ればいい、という。向きは確か壁の方だったような気がする
おお、神だか仏だか知らんが、ありがたいことよのう、と何十年も修行した老僧のような心境に陥った。
老僧になりきった自分は、言われるままに足がしびれることもなく、無念無想の境地で魂を清めた、となればよかったのだが、現実は暇だった。
知人の勧めとはいえ、なんの因果でこんなことになっちまっただかやあ、
と老僧は後悔するばかりで、頭のなかはこの年ごろの連中と同じで、女性の裸を思い描いたり、こんなことをやっている場合かよ、とかビールが飲みたいだの、と雑念が乱れ飛び放題、乱れ飛んでいた。
三十分だか1時間だかが過ぎたあとようやく釈放となった。
やれやれ、こういうのは自分には合わんなあ、
と思っていたら、晩飯代わりの飯が出るという。
ビールが先だろう、と思う間もなく食事らしきものが出た。
いま考えるとどうやら五穀米だか玄米、そうだ、玄米のおにぎりだった。当然のことながら美味くない。
老僧になり切ったわりに俗世間から脱出できなかった自分を恥じるよりも、心中、不満たらたらで、面倒くせえなあ、という気分が横溢していた。
参拝というかお参りというのをやって帰ることになった。
そんなことをしたってご利益なんて本当はないんだよなあ、と老僧から自分に戻った私は、そこではいい加減に手を合わせただけだった。
そのとき、参加者のおっさんから穏やかな声で
ちゃんと手を合わせた方がいいよ
という言葉をかけられた。
不満たらたらの自分は
まあ、とくにご利益があるわけでもないし、形だけでもいいんじゃないの
と答えたら、そのおっさんは激するふうもなく相変わらず穏やかな声で
ご利益があるとかないとかは関係ないんだよ。どうせやるならちゃんとやった方がいい
と宣(のたま)った。
あれから半世紀以上たったいまでも、その言葉だけはどういうわけか脳裏に焼きついている。
なにもなくても、どうせやるならちゃんとやらないとな。結果が出ようと出まいとそれは運しだいだと考える癖がついている。
俗世間にまみれながらも、その名も知らぬおっさんの言葉だけはいまだに実践しているのである。(してないかなぁ)
カニバリズムの映画
一緒に座禅に行った知人が夜の十一時にオールナイトの映画を観よう、とまた誘ってきた。
腰が痛いばかりか目も頭もひきつるように痛く、なにもできなかったので、性懲りもなくつき合うことにした。
二本立てだか三本立ての映画で、医学生が出てくる映画と食人族のものという、凄まじい組み合わせの映画だった。
食人族(知人は食肉人といって騒いでいた)の映画はドキュメンタリータッチの映画だった。
カニバリズムとは人が人を食べる慣習のことであり、映画はこの人種を探しに5,6人の男女が密林に入って探すという単純極まりないストーリーだった。
B級映画としてはよくできていたが、密林で靴を履いたらなかに毒蛇がいて命をおとしたり、最後はカニバリズムの人種が出てきて男は皆殺しにして女は強姦し、最後は男女ともに杭にケツの穴から口にかけてくし刺しにするというものだった。
いまでは絶対に上映されない映画がまだ半世紀以上前には上映できたのである。エロ・グロ・ナンセンスなどという言葉が流行っていた時代だったように思う。
それはともかく、描写がひどく残虐性をあおり、見ていてだんだん気持ち悪くなってきた。
映画を見終わったのが午前4時ぐらいだっただろうか。
お前、顔が青いぞ、
と知人がいうが、それどころではなく、吐きそうになっていた。
お前はよくあんな映画、平気で観られるな
と恨みがましくいうと
あんなものは大したことないよ、
と涼しげな顔でいうので、パンチしてやろうかと思ったぐらいである。
電車もないのでぶらぶらと早朝の街を歩き、帰路についたが途中で何度も休み、ほうほうのていで安普請のアパートに転げ込んだ。
それから三日間は気持ち悪くて、寝込んでしまった。
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